「絵本をよんでみる」 五味太郎 小野明
こんにちは、ささやまのどかです。
この本は、20代の頃に読んで、絵本がもっと大好きになったキッカケの本です。
何となくパラパラと立ち読みしていたら、滅茶苦茶ツボで面白かったんです、自分にとって。なのでその場で買ってしまいました。
絵本作家の五味太郎さんと編集者の小野明さんが、13冊の絵本について熱く語り合ったおしゃべりが、文字になっています。最初は五味太郎さんが絵本作家なのも知らなくて、この本で知りました。
- うさこちゃんとうみ
- よわむしハリー
- キャベツくん
- キスなんてだいきらい
- よあけ
- ふたりはともだち
- ふくろうくん
- キミちゃんとかっぱのはなし
- おっとあぶない
- かいじゅうたちのいるところ
- 変なお茶会
- エンソくん きしゃにのる
- どんどん どんどん
この13冊。
最初の「うさこちゃんとうみ」の考察だけでも引き込まれます。
あるひ とうさんの ふわふわさんが
「きょうは さきゅうや かいのある
おおきな うみに いくんだよ。
いきたいひと だあれ?」といいました。
とりあえずおまえに関係なく、オレは海に行くんだけど、おまえ、いっしょにどう?っていう誘い方が「しゃれてるねえ」という感じ。
「あたし あたしが いくわ」
となる。
これ、すごいね。「いきたいな」じゃなくて、「いくのは わたしだ」、「あたしが いくわ」って。ここの文章だけみていても、二時間はボーっとして楽しめる。
―ぼくも十五分ほど…
その差は人生の経験の差でしょう。君もこれから経験を積めば二時間になります。
二時間…。
このあとも、普通にパーっと読んだらすぐ読めてしまう「うさこちゃんとうみ」を、どこまでも深く深く読み込んでいくんですね。
うさこちゃん、なんでお世辞言うんだろうか、とか、 絵は単純なのに文章にはいろんな釘を打っている、だとか、ふわふわさんとうさこちゃんが一回も一つの画面に同時に出てこない、だとか。
もうそれ読んだら、自分も一緒に色々想像しちゃって。
うさこちゃんが水泳パンツをはいた場面では…。
とうさんは おどろいて いいました。
「おまえひとりで はけたのかい?」
ふつうの流れでいくと、このあとは「もちろんはけたよ」というようなことかもしれない。ところが絵が、もうピシッとはいてるわけ。「トーゼン」っていう感じで。ここらへんのやりとりが「ああ、絵本だ」と思う。
ほんとだ、ほんとだ。絵本ならではの表現なのね。もうこれ読んだら、うさこちゃんの水泳パンツ姿が、すごいドヤ顔に見えてくる。「こんなこと、だいぶ前から出来てるよ。パパ知らなかったの?」とでも言ってるような。 いつも無表情のふわふわとうさんも、この時は劇画タッチなふわふわさんだったんじゃないかしら。これ以上文字で説明しなくても、絵を見れば全て分かるよっていうのが絵本なんだな!
なんて、こっちまで興奮状態になってきます。
五味太郎さんは最終的に、この絵本の中でずっと感じる「寂しさ」の理由や背景を、ご自分の見解で、うさこちゃん家族のストーリーを想像して仮定して納得されてるんです。
うさこちゃんのお世辞や、どこかただよう父と娘の緊張感の理由。
こちらまで、“あぁナルホド、そうかもしれない”と思ってしまう。
他の12冊も紹介したいことや書きたいことはたくさんあるんですが、時間もなくなったしこのへんで。また今度にします。
自分が「絵本はここまで深く読みこめるのかと驚愕し、さらに絵本好きになった話」でした。